2012.12.09(更新日:2012.12.09)
●血圧は健康のバロメーター
循環器病の大きな危険因子となるのが高血圧です。特に高血圧の人は、脳卒中になる危険が高く、その後遺症などによって、寝たきりになってしまう高齢者が増加し、社会的な問題となっています。そうならないために、普段から多少の手間暇をかけて、血圧のコントロールをすることをお勧めします。なお、高血圧は自覚症状がほとんどなく、深刻な事態となるまで気付かないことから「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。慢性疾患で当院に通院されている患者さんのうち、最も多い病気が高血圧症です。本特集では、血圧の自己管理を中心に解説します。
●高血圧が続くとなぜいけない?
血圧が高いと、血管の壁に絶えず大きな圧力がかかり、動脈硬化が進行してしまいます。そうすると血管がつまりやすくなり、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病を引き起こします。
●家庭血圧の目標値
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインによりますと、家庭血圧の降圧目標値は以下の通りです。
◯若年・中年者は120/80未満
◯65歳以上は135/85未満
◯心筋梗塞や腎臓病を有する場合は125/75未満
◯脳卒中を有する場合は135/85未満
◯糖尿病を合併している場合は125/85未満
普段血圧測定されない人は、上記値を参考にして、測定されることをお勧めします。
●家庭での血圧測定のポイント
家庭血圧の測定に適しているのは早朝です。早朝は血圧が上昇しやすく、脳卒中や心筋梗塞も起こりやすい時間帯です。また、降圧薬を服用している人は、薬の効果が切れやすい時間帯でもあります。朝は、起床後1時間以内、排尿後、朝食前、降圧薬服用前に測定するのが良いでしょう。夜も測定する場合は、食事、入浴、服薬、排尿を済ませてから、就寝前に測定するのが良いでしょう。いずれも、座って、1~2分間安静にしてから測定しましょう。圧迫帯(カフ)は上腕に、指が1本入る程度に巻きましょう。診察時に血圧手帳を持参されますと、診察室血圧だけを指標にするよりも、より正確な評価、より適切な処方が可能となります。
●高血圧解消のための食事運動療法
太り気味の人は、減量することで血圧が下がります。当院でも、時々体重を測定しますが(実際にはBMIと内臓脂肪の蓄積もチェックするために身長と腹囲も測定します)、減量が必要な人は、毎日体重計に乗ることで、無意識に食べる量が減るなどの効果も期待できます。減量で血圧のコントロールが良好になることは、降圧薬の種類や量が減るだけでなく、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の改善にも繋がりますので、素晴らしいことです。適正体重の人も、今より体重が増えないようにしましょう。丼もの、麺類、チャーハン、カレーなど、味の付いた主食には塩分が多く含まれています。できるだけ食べる回数を減らしましょう。漬物や佃煮など塩分の多い食品は、食べる回数や1回に食べる量を減らしましょう。適度な運動で血圧を下げましょう。また運動はストレス解消という点からも効果的です。
●一度血圧を下げる薬を飲み始めると一生飲まないといけないの?
1年以上、正常血圧が続き、生活習慣の改善が行われている場合には、休薬・減薬も可能です。ただ、降圧薬を中止することを目標とするのではなく、血圧を良好にコントロールして合併症を予防することを目標としましょう。