11/9(日)に、内科学会の生涯教育講演会に参加しました。 |鳥取県鳥取市気高町の内科・呼吸器内科クリニック

11/9(日)に、内科学会の生涯教育講演会に参加しました。
11/9(日)に、内科学会の生涯教育講演会に参加しました。 2014:11:10:07:56:00

2014.11.10(更新日:2014.11.10)

11/9(日)に、出雲市の島根大学医学部で開催された、日本内科学会中国支部主催の生涯教育講演会に参加しました。
その中で、大分大学医学部消化器内科の村上和成先生が、「ピロリ菌感染症の最近の話題」という演題で、講演されました。
印象に残った内容を紹介します。
 
まず、我が国の胃癌の疫学、基礎知識として、年間約5万人が胃癌で亡くなっていること、全癌中、第2位を占めていることを話されました(なお、1位は肺癌です)。
そして、胃癌発症のリスク要因として、ピロリ菌感染症が重要であると話されました。
「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対して、除菌治療が保険適応(2013年)となったのは、日本が世界で初めてで、今後、除菌治療の対象が飛躍的に多くなるとのことでした。
 
ピロリ菌感染者からは、胃癌、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、過形成性ポリープ、機能性ディスペプシアなどの疾患が生じます。
また、ピロリ菌感染が原因となり、胃外に生じる疾患として、鉄欠乏性貧血、慢性じんま疹、特発性血小板減少性紫斑病などが挙げられます。
 
ただ、注意して頂きたいのは、これの疾患の原因は、ピロリ菌感染だけではないということです。
例えば、胃・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌感染以外にも、鎮痛薬、ステロイド薬、ストレス、胃酸過多、胆汁逆流が原因として挙げられます。
 
除菌治療後の注意点として、除菌終了後、4週間以上経過してから、必ず効果判定を行い、必要なら(一次除菌治療が不成功なら)二次除菌治療を行うことを強調されていました。
もう一つ、強調されていたのが、除菌治療により胃癌のリスクは減るが、0にはならない(特に感染してから除菌までの年数が長かった場合)ので、年に1回の胃カメラによるフォローアップが必要ということでした。
 
講演後の質疑応答で、フロアの先生から「何歳までがピロリ菌の除菌治療の適応となるか」という質問がありました。
その回答は、年齢制限はないというものでした(これについては医師により多少意見が異なることを申し添えます)。
確かに、例えば80歳を過ぎた高齢者に対し、除菌治療を行い胃癌の発症リスクを下げることにどれだけの意味があるかは、議論が分かれるところだと思います。
本人の価値観、心身の健康状態、基礎疾患などによっても、判断が異なってくると思います。
80歳以上の高齢者を対象に、大規模前向き研究を行うのも無理でしょう。
村上先生は、少なくとも、胃炎は改善し、胃潰瘍の予防も期待でき、小さな子供(例えば同居しているお孫さん)への感染も抑制できることに、高齢者に対する除菌治療の価値を置いておられました。
 
これと関連して、患者さんからよく質問されるのが、「ピロリ菌は、いつ、どこで感染するのか」というものです。
免疫能の未熟な子供(目安として5歳以下)が、ピロリ菌を保菌している両親や祖父母から、口移しなど濃厚に接触した場合に、ピロリ菌が感染しやすいので、これらの行為は避けた方が無難です。
 
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