父親は六人兄弟(全員男性)の五男です。
父親の兄弟は、戦中戦後の食糧難の時代に生まれましたので、
上から都会に出て行き、五男の父親が実家を継いでいます。
私は地元で開業していますので、伯父達をご存じの患者さんも多くおられます。
「長男さんとは同級生だ。」「次男さんは体力があって働き者だった。」などと教えて頂きます。
長男の伯父は、静岡県浜松市浜北区で日本ロックという会社を経営しています。
この会社は、四輪車、二輪車、産業機器などの電装部品を作っています。
34年前に創業し、徐々に規模を拡大し、現在では、本社、支社、
技術センター、上海有限公司、タイ拠点を有しています。
医療と工業とでは分野が異なりますが、労務、経営理念、職場の環境整備などは共通点も多いはずで、
会社見学や伯父の経営哲学を聞くことは、クリニックの運営に役立つと考えました。
私から見学させてほしいと申し出て、ゴールデンウィークを利用して、一泊二日で浜松に行きました。
1日目は、社員の方に技術センターを案内して頂きました。
連休中にもかかわらず出社して頂き、いろいろ教えて頂き、ありがとうございました。
山田部長は歴史にも詳しく、移動中の車内で、徳川家康に関係する合戦の場所や、
浜松城の歴史などを教えて頂きました。
2日目は伯父に本社を案内してもらいました。
伯父とは、食事も宿泊も移動も、ずっと一緒でしたので、いろいろな話を聞くことができました。
以下に、印象に残った内容を記載します。
創業当初は、従業員2名でスタートし、人が集まらないなどの苦労があったそうです。
昼夜問わず、自宅の2階で設計の仕事をしていたそうです。
娘さんに「お父さんの描いた絵はよく解らない。」と言われたことがあるそうです(伯母さんより)。
風景画や人物画ではなく、スイッチやバネの設計図だったためです。
その後、徐々に社員が増え、労務につきましては、「言うことは言う。ひどく怒られた社員もいる。
その代わり、給料を多めに支払い、働く環境を整える。」ことが大切とのことでした。
技術センター内には、女性社員が足を伸ばして休めるようにと、畳の部屋が数カ所ありました。
洋風の建物にあって、ここだけがホッとして休める和風のスポットでした。
仕事と休憩のメリハリを付けることは、頭も体もクールダウンし、
疲れを溜めないためにも大事なことと考えました。
経営に関しましては、他社よりも10%安い値段で取引し、
その値段でも10%の利益が出る工夫をすることを、方針としていました。
そのためには、特許を沢山取得し、設計や製造過程を工夫するなど、
日々業務内容を改善していました。
「何でも、ボーとしていると、すぐに古くなる。」と言っていました。
税金に関しましては、所得税も法人税も支払うのは当然で、節税はしないとのことでした。
経営理念十箇条に「利益のない企業は罪悪である」「納税高は立派な勲章である」を挙げており、
中小企業成長の道に「納税0体制で社長大豪邸、遣り手社員来たらず」という文言がありました。
確かに、会社の規模や利益の割には、自宅は質素でした。
その他、社会貢献に関しましては、会社に「つくし会」という社会貢献福祉団体を作り、
様々な福祉活動を行っていました。
また、個人レベルでも、学校や施設に寄付を続けていました。
整理・整頓・掃除・挨拶についてですが、まず、挨拶につきましては、
社員同士の出社時および退社時の挨拶はもちろん、来客者への挨拶もきちんとしているとのことでした。
取引業者、宅配便の運転手、町内会の人など、全ての人に気持ち良い挨拶を心がけているとのことでした。
整理・整頓・掃除は、作業効率を上げるためにも、
製品の信頼性を上げるためにも、重要とのことでした。
具体的には、床にゴミ一つ落ちていてもいけないそうです。
当院でも、ミーティングなどで、「整理・整頓・掃除・挨拶はしっかりしましょう。」
と話しますが、重要性を再認識し、今後も、継続して力を入れていくところだと思いました。
「百聞は一見にしかず」という諺通り、今回の会社見学は、ビジネス書何冊分もの価値があり、
これからのクリニックの運営や、日々の生き方、考え方にヒントを与えてもらったように思います。