8/4(日)、米子コンベンションセンターで、介護認定審査会委員現任研修会が開催され、参加しました。
4月から審査会に出席しており、まだ新参の委員ですので、他の審査委員に迷惑をかけてはいけないと思い、参加しました。
皆さんの多くは、介護保険になじみがないと思いますが、40歳以上の人は、介護保険料を支払っています。
サラリーマンの人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされています。
自営業の人は、国民健康保険料に上乗せして納付しています。
研修会で印象的だったのは、一次判定の際、調査員が申請者の家(施設)に出向き、基本調査74項目を判定(分類)していくわけですが、一つ一つに厳密な基準(定義)があるということです。
例えば、「歩行」ですと、「立った状態から継続して(立ち止まらず、座り込まずに)5m程度歩ける能力があるかどうか」という定義が決められています。
例えば、「1mずつ、立ち止まり、休みながら歩く」場合は、「できない」に該当するわけです。
また、「嚥下」ですと、「食物を経口摂取する際の飲み込む能力」と定義されています。
医学的には、嚥下は誤嚥性肺炎の原因となるのが問題であり、年齢、栄養状態、基礎疾患(脳血管障害、歯科口腔外科領域や耳鼻咽喉科領域の疾患、消化器疾患、呼吸器疾患)の有無、意識レベル、免疫能に左右されるわけですが、このような背景を考慮するのではなく、とにかく食物が口の中に入ってから、ゴックンと飲み込み、食道へと移動するまでの事象に注目するわけです。
例えば、「普通食ではむせるが、トロミをつけたり、刻み食やミキサー食に変更したりすることで、むせずに飲み込める」のであれば、ハイリスクであっても、「できる」に該当するわけです。
臨床的には、脳血管障害後遺症による麻痺、栄養障害、舌癌や食道癌による通過障害などがあると、嚥下障害が生じ、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
そして誤嚥性肺炎を起こすと、安静、絶食が必要となり、ますます栄養障害、体力低下が進行するというように、悪循環を来します。
介護認定において、実際に申請者(患者さん)と接するのは、主治医と審査員です。
主治医は、主治医意見書を作成する際に患者さんを問診・診察するわけですが、歩き方、表情、会話(コミュニケーション能力)などから、短時間で「要介護1かな」などと判断した上で、寝たきり度や認知症の程度を追加で確認(質問)していくはずです。
その後、必要に応じて、「やっぱり要支援2(要介護2)かな」などと頭の中で修正します。
これば、喘息発作、肺炎、熱中症などの重症度判定でも同じことです。
喘息発作の重症度を動脈血酸素飽和度だけで判断するのは危険ですし、肺炎の重症度をCRPや白血球数だけで判断するのも危険です。
検査所見は、あくまで参考程度にとどめます。
一方、審査員のやり方は、先程述べましたように、まさに積み上げ方式ですね。
このやり方の良いところは、客観的で平等であることです。
判定基準は全国共通ですので、どこに住んでいても、同じ判定となり、結果的に同じ介護サービスが受けられます。
短所としましては、とにかく手間(労力、お金、時間)がかかりすぎることでしょうか。
要介護度は、「要介護認定等基準時間」と呼ばれる介護の手間で判断されますが、調査員は「私の手間も考えてよ」と思っているのではないでしょうか。
本当に、要介護認定に携わる方々には頭が上がりません。
話は変わり、私は審査員としてだけではなく、日常診療において、かかりつけ医として、患者さんの主治医意見書を書きますが、数年前から要介護度が厳しくなった印象があります。
具体的には、今までは要介護度3だったのか、更新した結果、要介護度1に変わったという具合です(更新期間は患者さんごとに決められています)。
ある月に更新目的で、8名の主治医意見書を作成しましたが、そのうち3名が、今までより軽い方の要介護度に変わっていました。
元気になって軽い方に変わるのなら良いのですが、ADLは今まで通りなのに、要介護度が低くなってしまうと、今まで受けていた介護サービスを減らさないといけなくなるので、患者さんやケアマネさんは困ってしまいますよね。
今回の研修会では、認定基準が変わったという話はありませんでしたので、多分、審査員の判断能力が向上し、より厳密に一次判定されるようになったものと推測されます。
そのような経緯もあり、ここからは個人的な話ですが、数か月前に生命保険の介護特約を解約しました。
今までは、比較的容易に要介護2くらいまでになる印象でしたが、準寝たきりに近い状態でないと、要介護2以上には認定されません。
保険会社に申請するには、ややこしい書類を沢山提出する必要がありますので、結局、自分では申請できないわけです。
その段階(寝たきり度)では、保険金をもらったとしても、やりたいことに使える状況ではなくなっています。
生命保険に比べますと、貯金や投資信託の方が、自由度が高いですよね。
介護特約を解約すると、今まで支払っていた保険料が無駄になるので、迷いましたが、今回はサンクコストと考えて、解約しました。
しかし、代理店は近所にあり、担当者も普段良くして頂いているので、代わりに変額個人年金保険を勧められて、介護特約と同じくらいの保険に入ってしまいました。
つくづく、意志が弱いと思います。