2019.09.12(更新日:2019.09.12)
近年、風疹(風しん)の流行が問題となっています。
何が問題となっているのかと言いますと、風疹に免疫のない妊婦が風疹ウイルスに感染しますと、先天性風疹症候群を発症する可能性があることです。
風疹に免疫がないとは、風疹に罹ったことがないとか、風しんワクチンを接種したことがないということで、今後、風疹ウイルスに感染したり、風疹を発症したりする可能性があるということです。
先天性風疹症候群とは、上記のようなリスクのある妊婦が、家庭や職場などで風疹に罹ると、風疹ウイルスが胎児にも感染してしまい、生まれた時に先天性心疾患、難聴、白内障などの合併症が出現することを言います。
先天性風疹症候群を予防するためには、妊娠を希望する女性は、積極的に風疹ワクチンを接種して、免疫をつけておくことが重要です。
ただし、風疹ワクチンは生ワクチンですので、妊娠中の女性には接種できません。
あくまで、妊娠する前にワクチン接種しておくことが重要です。
その一方で、インフルエンザ予防接種と同様の考え方で、社会全体として、風疹ウイルスに対する免疫をつけておくことも重要です。
インフルエンザ予防接種ですと、副反応(ワクチンの副作用)、重症の卵アレルギーなどで接種できない人がいますし、帯状疱疹、水痘などに罹患した人はすぐには接種できませんし、ステロイドや抗癌剤治療を受けている人は接種可能だとしても十分な免疫をつけることができません。
そこで、それ以外の人が積極的にワクチン接種し、社会全体としてインフルエンザウイルスに対する免疫を獲得しておくことで、インフルエンザの流行を抑制し、結果的に、上記理由でワクチンが打てない人を守ってあげることができるのです。
風疹の場合も、風疹ワクチンを接種する前に妊娠してしまう場合があります。
この場合、妊婦に風疹ワクチンは接種できませんので、家族・職場の同僚(男性女性問わず)が風疹に対する免疫を獲得することで、家庭や職場に風疹ウイルスを持ち込ませないという配慮(社会として免疫を獲得する)が重要になってきます。
そのような背景もあり、今年の春から、国の事業として、「風疹の追加的対策」が始まっています。
具体的には、1962(昭和37)年~1979(昭和54)年生まれの男性に、クーポン券が郵送されます。
この年代は、女性のみ、風疹ワクチンの集団接種が行われましたので、男性は未接種者がほとんどです。
当院でも、春以降、行政からの委託で抗体検査を行っていますが、大部分の人が、抗体価が陰性です。
それでは、1962(昭和37)年より以前に生まれた人はどうなのかという疑問が出そうですが、年齢等も考慮して、対象からは外されているようです。
話を元に戻し、郵送されてきたクーポン券を医療機関に持参して頂きますと、採血をさせて頂きます。
その日は、そのまま帰って頂きます。
その後、約1週間後の都合の良い日に結果を聞きに来て頂きます。
抗体価が陽性(既に免疫がついている)の場合は、何もせず終わりです。
抗体価が陰性(免疫がついていない)の場合は、風疹ワクチンの接種をお勧めします。
院内にワクチンの在庫があれば、当日接種させて頂きます。
(松・北・米共著)