2019.11.18(更新日:2019.11.18)
2019年11月17日(日)に、米子市で産業医研修会が開催され、参加しました。
研修会の内容は、以下の通りでした。
①働き方改革
②職場におけるハラスメント
③職場における受動喫煙防止対策
④勤労者のメンタルヘルス
⑤腰痛予防
このうち、「③職場における受動喫煙防止対策」では、
○ 職場の受動喫煙防止対策に関する労働安全衛生法の規定
○ 職場における受動喫煙防止対策のすすめ方
○ 受動喫煙防止対策設備(禁煙室)の設計のポイント
が主な内容でしたが、読者の皆さまにも役に立つ話もありましたので、紹介します。
まず、タバコの害についてです。
喫煙男性は、非喫煙者に比べて、肺癌による死亡率が4.8倍です。
喫煙女性は、非喫煙者に比べて、肺癌による死亡率が3.9倍です。
喫煙者は、非喫煙者に比べて、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)の死亡率が3.28倍です。
喫煙者は、非喫煙者に比べて、脳卒中(脳出血、脳梗塞)の死亡率が1.56倍です。
呼吸器疾患(慢性肺気腫、慢性気管支炎、肺癌)や歯周病などの原因になります。
妊婦が喫煙しますと、生まれてくる赤ちゃんが低出生体重児となる頻度が2倍高くなり、早産、自然流産、周産期死亡の危険性が高くなります。
受動喫煙も重要です。
受動喫煙とは、他人の喫煙により、タバコから発生した煙にさらされることを言います。
問題なのは、タバコから発生した煙(副流煙)は、喫煙者がフィルターを通して吸い込む煙(主流煙)よりも有害物質が多いということです。
具体的には、ニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍、主流煙よりも多く含まれています。
国立がん研究センター「がん情報サービス」によりますと、受動喫煙を受けない人を1とした時の、受動喫煙者の相対危険度は、肺癌1.3倍、脳卒中1.3倍、虚血性心疾患1.2倍となっていいます。
ですから、家族や職場の同僚が喫煙者の場合、副流煙を吸い込まないように十分に注意して下さい。
次に、加熱式タバコの受動喫煙についてです。
皆さん、加熱式タバコにも受動喫煙はあると思いますか?それとも、ないと思いますか?
答えは「ある」です。
ただ、この場合、少々複雑で、加熱式タバコの喫煙者の呼出煙から有害物質が排出され、それを周囲の人が吸い込むことによって生じます。
成人の場合、「解剖学的死腔」と言いまして、吸った空気(酸素、窒素、たばこの煙などの有害物質)の全てが肺に到達して、ガス交換されるわけではなく、1回換気量約500mLのうち、約150mLは肺に到達することなく、そのまま吐き出されます。
そのため、1呼吸あたり150mLは、喫煙者の周囲に呼出され、エアロゾルとなり、しばらくの間、その環境にとどまります。
ですから、加熱式タバコによる受動喫煙は、第3次喫煙(Third-Hand smoking)と呼ばれます。
加熱式タバコの喫煙者は、「周囲に有害物質を発生させている」という自覚が必要ですし、家族など周囲の人は、「加熱式タバコでも受動喫煙に注意が必要」と思わないといけません。
話はそれますが、2011年に国立がん研究センターが、日本人のためのがん予防法「がんを防ぐための新12か条」を公表しています。
以前に国立がんセンターが定めた「がんを防ぐための12か条」との主な違いは、禁煙を受動喫煙と合わせて2項目にわたって最初に置いたことです。
がん予防も生活習慣病予防も、基本は一緒です。
結局は、禁煙、節酒(体質、病気によっては禁酒)、食事運動療法、感染対策、健診(がん検診)ということですね。