2020.09.21(更新日:2020.09.21)
9月20日に倉吉未来中心で産業医研修会が開催され、参加しました。
新型コロナウイルス感染症への対策として、マスク着用、アルコール手指消毒、会場入口での体表面温度測定が徹底されました。
研修会の内容は、以下の通りでした。
①高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン、職場でのパワーハラスメント
②勤労者のメンタルヘルス(うつ病、人格障害、発達障害の特性と対応)
③SDSの読み方
④職場における感染症対策について
⑤職場における受動喫煙防止対策について
このうち、「④職場における感染症対策について」は鳥取大学の感染制御部/高次感染症センター/感染症内科の千酌浩樹先生が講師を務められました。
千酌先生は、新型コロナウイルス感染症関係の報道で、最近、テレビ・新聞・ラジオなどに出演・掲載されていますので、ご存じの方もおられると思います。
千酌先生は、私の大学時代の上司で、学位論文は「定量的PCRを用いた緑膿菌の薬剤排出ポンプ発現量の測定」でしたが、千酌先生にPCRの手技を一から教えていただきました。
講演内容の中で、産業医として知っておくべきことは、以下のようなものでした。
①感染症の出勤停止に関する法令(感染症法、労働安全衛生法)。
②感染症に罹患した労働者の出勤停止。
③潜伏期、感染可能期間、休業期間。
④職場における感染症伝搬予防策(接触予防策、飛沫予防策)。
⑤感染症伝搬予防策の調べ方(CDCガイドライン)。
⑥ノロウイルス集団感染での対応。具体的には、原因微生物、感染症類型、感染予防策、有効な消毒薬、潜伏期、感染可能期間、休業期間、アドバイス例。
⑦潜伏期にも感染性がある感染症。新型コロナウイルス感染症は発症2日前から感染性があると考えられている(感染可能期間の始まりは発症2日前)。
⑧インフルエンザ集団感染での対応。具体的には、原因微生物、感染症類型、感染予防策、有効な消毒薬、潜伏期、感染可能期間、休業期間、アドバイス例。
⑨外国人労働者の国籍。
⑩輸入感染症と潜伏期。
⑩世界の新興・再興感染症の現状。SARS、MARS、鳥インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症。
⑪SARS、MARS、COVID-19(2019-nCoV)の潜伏期と感染可能期間の比較。
⑫SARS-CoV-1とSARS-CoV-2の環境中でのウイルスの生存期間。
⑬新型コロナウイルス感染症におけるマスクの重要性。
⑭新型コロナウイルス感染症の各種検査(PCR、抗原、抗体)が陽性になる時期。
⑮鳥取大学医学部附属病院のPCR装置の特徴。
⑯次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム。
⑰ワクチン開発状況。
また、質疑応答では、冬のインフルエンザ流行シーズンに向けて簡便さが期待されている抗原検査の偽陽性・偽陰性の問題、検体採取時の個人防護具の取扱い(WHOとCDCとでは多少異なります。SARS-CoV-2に限ったことではなく、状況に応じて適切に対応することが必要です。)などの問題が取り上げられました。
講演を拝聴し、常に情報を収集しつつ正確な知識を得ておくことの重要性を認識しました。
また、むやみに心配・恐怖・パニックにならず、科学的根拠をベースにして、出勤停止の判断や感染予防策を講じることが必要と考えました。
今回の研修会は、産業医として事業所の感染症対策を勉強するためのものでしたが、当院も規模は小さいながら事業所の一つです。
特に医療機関は、小児・高齢者・基礎疾患(糖尿病、心臓病、慢性呼吸器病変)を有する患者さんなど、感染症に配慮すべき人が集まる場所です。
日頃からの感染対策を講じるのは当然ですが、インフルエンザ同様、完全に隔離し、完全に発生を防ぐことはできません。
医療従事者の暴露後の対応につきましては、日本環境感染学会が「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」を出しておりますが、いずれにしましても、一般事業所よりも、一層慎重な対応が必要です。
具体的には、より厳密な就業制限、対面診療の制限などが必要と考えます。
このあたりは、実際に感染事例、ウイルス暴露(濃厚接触)事例が生じた時点で、保健所と相談し、保健所の指示に従うことになります。
当院では、そのような状況となった場合に備えて、オンライン診療(電話再診を含む)の準備を開始したところです。
対面診療ができなくなった場合、2週間程度、オンライン診療に切り替えることで、診療を継続し、患者さんの薬を切らさないようにすることは、開業医に求められる機能の一つと考えています。
最後は偉そうなことを言いましたが、毎週、ミーティングで職員にオンライン診療の必要性、オンライン資格確認のメリットなどを話している割には、院長がやるべきオンライン診療のルール作り、ハード・ソフトの準備などは、まだ2合目くらいです。
今年の11月初旬には、細々とビデオ通話を利用したオンライン診療が開始できるのではないかと思っています。
専用スマートフォン、カメラやマイク付きのPC、院内LANなどを整備する必要があるのですが、器械に疎く、PCの初期設定もLINEの友だちのなり方も分からないので、これから勉強しないといけません。
電話再診ならすぐできますが、事前の保険証確認は、自宅にコピー機やFAXがない家庭がほとんどでしょうから、どうしてもスマホで保険証を撮影し、メールやLINEに添付してもらう必要がありそうです。
ここまで来ると、「ピンチの法則」の話になってしまいますが、当初考えていた最悪のパターンには至らず、割と前向きに取り組めている感覚です。
コロナ禍の中、受診して頂いた患者さんには、感謝の気持ちで、明るく、温かく診察しておりますので、来院される患者さんも、マスク・手洗いの励行を、重ね重ねお願い申し上げます。