2021.12.12(更新日:2021.12.12)
本日、四学会合同事業セミナー「COVID-19との対峙~3年目を迎えて~」がWEB形式で行われました。
四学会とは、日本感染症学会など、感染症領域に従事する医療従事者が所属している四つの学会のことです。
コロナ前は、全国的な学会(セミナー)は、東京、大阪、京都で行われることが多く、簡単には参加できませんでしたが、with コロナではオンラインで参加できるようになり、大変助かります。
「COVID-19の診断的検査の選択と解釈」のセッションでは、核酸増幅検査(PCR法)と抗原検査を中心に解説されました。
診断的検査の中心はPCR検査であり、有症状者でCOVID-19が疑われる症例では抗原定性検査を行います。
オミクロン株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタに続きWHOが懸念している5番目の変異株)でも、診断的検査の中心はPCR検査であり、有症状者でCOVID-19が疑われる症例では抗原定性検査であることに変わりありません。
皆さんが発熱や咳・痰などの呼吸器症状で最初に受診される診療所(開業医)では、検査に要する時間、設備などの点で、主に抗原定性検査が用いられます。
保健所での確認検査、総合病院での入院時や手術前の検査には、PCR検査が用いられます。
「COVID-19薬物治療の考え方」のセッションでは、レムデシビル、バリシチニブ、カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブ、デキサメタゾン、モルヌピラビルについて説明がありました。
モルヌピラビルはアメリカ合衆国で緊急使用許可が下りており、日本でも12/3に製薬会社が厚労省に承認申請を行ったことから、年内にも使用可能となる見込みです。
「COVID-19ワクチンの有効性と副反応」のセッションでは、有効性、安全性、3回目のブースター接種、5~11歳への接種について説明がありました。
ワクチンの感染予防効果、発症予防効果は十分に高いので、体質や信条などの理由がなければ、接種をお勧めします。
デルタ株(変異株)へのワクチンの効果は、中和活性がやや低下するものの、効果は十分に保たれています。
ワクチンを2回接種した後のブレークスルー感染では、ワクチン未接種のグループと比較して、重症化率、致死率が低下しますので(軽症で済みますので)、「ワクチンを接種したのに感染することがある」などの煽りに振り回されないようにしましょう。
「インフルエンザワクチンを接種したのにインフルエンザに罹った」というのと同様に、個人のがっかりする気持ちは分かりますが、社会全体としては感染症の蔓延を防いでおり、高齢者や基礎疾患を有する人の重症化、入院、死亡のリスクを低下させます。
「COVID-19診療のための隔離予防策」のセッションでは、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に対しては、標準予防策を実践しつつ、接触・飛沫予防策を適用し、エアロゾルを発生しやすい手技の際には空気予防策に準じてN95マスクなどの呼吸器防護具を使用するのが一般的との説明がありました。
なお、上記の予防策はCOVID-19の治療を行う病院(既に診断が確定しているケース)での予防策であり、当院のように地域の第一線で発熱や風邪症状で受診された患者さんの診療に当たる場合は、状況が異なります。
発熱と一言で言っても、普通感冒、インフルエンザ、RSウイルス、溶連菌、アデノウイルス、胃腸炎、肺炎、虫垂炎、胆のう炎、尿路感染症など原因は多種多様です。
受付・診察時点で、新型コロナウイルス感染症が否定できない以上、原則37.5℃以上の発熱があれば、院内には入って頂かないようにして、自家用車か屋外に設置した臨時の待機室で診療を行います。
また、発熱がなく点滴室のカーテン隔離で診察を行った後、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、溶連菌、アデノウイルスなどの検査を行うことになった場合も、検査時のくしゃみでエアロゾルが発生しやすいため、自家用車か待機室に移動して頂き、検査を行います。
院内感染対策のためですので、ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
当初、マスコミがセンセーショナルに報道し、日本国民が経験したことのない緊急事態宣言が出され、国民全体がパニックに陥りました。
当時は、正確な感染経路、重症化率、致死率が分かっておらず、ワクチンも治療薬もなく、ある意味仕方なかったとも言えます。
その後、約2年が経過し、感染経路が分かり、各医療機関で手技に応じた適切な感染予防策が行われるようになり、ワクチン接種が進み、ようやく冷静さを取り戻しつつあるように思います。
今後も新しい変異株、病原体が出現すると考えられますが、医療従事者は常に勉強し、新しい知識を身につけ、冷静な言動を心がける必要があると再認識しました。