2023.05.07(更新日:2023.05.07)
2023年5月5日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を終了すると発表しました。
明日(5月8日)には、日本でも感染症法上の2類相当から5類へ移行されます。
2020年の年初から始まった、全世界を巻き込んだパンデミックは一つの区切りを迎えました。
皆さんは、この3年4カ月にわたるパンデミックを中心とした世界の出来事、日本の出来事、御家庭や職場での出来事にどのような感想をお持ちでしょうか。
コロナに罹った人、重症化した人、仕事が忙しくなった人、暇になった人、転職した人、物価高で困った人、他の病気に罹った人、メンタル疾患が悪化した人、家庭内のいざこざで悩んだ人など、いろいろな方がおられると思います。
コロナに罹っても軽症で済んだ人は、「ああ良かった。しばらくはコロナに罹らなくてすむ。」と安堵されたことでしょう。
ほとんどの方が、この軽症で済んだか、もしくは無症状か、未感染だと思います。
重症化した人は、「なぜ自分が重症化したのか。食事・運動・睡眠の大切さを疎かにしていなかったか。基礎疾患を放置していなかったか。ストレスをため込んでいなかったか。肥満はなかったか。喫煙・飲酒はリスクを自覚した上で節度あるものだったか。安易に薬やサプリメントや健康食品に頼っていなかったか。」を考える良いきっかけになったと思います。
僕は、医療従事者・開業医ということもあり、影響がありました。
特に2022年は、患者さんの急増で、医者人生のなかで一番忙しい1年でした。
コロナ以外にも、医療事務職員の総入れ替え、プライベートで毎月米子までの往復、奥さんが高熱で2週間寝込むなど、盛りだくさんの1年でした。
細かいことでは、この4月から医療機関でのオンライン資格確認と、オンラインによる返戻レセプトの再請求が義務化され、パソコン音痴の僕としては、それなりのストレスでした。
特にオンライン資格確認につきましては、顔認証端末は2021年には届いておりましたが、ニーズがないこと、マイナンバーカードを院内で紛失されたくないこと、通信障害やセキュリティの問題などで導入を延期しておりました。
4月からの義務化に間に合うように、3月から導入を開始しましたところ、マイナンバーカードはともかく、保険証もリアルタイムで資格確認ができる点が予想以上に便利でした。
再診の患者さんは、返戻(保険証の有効期限が切れていた)がなくなります。
初診の患者さんは、最低限の情報(氏名、生年月日、番号など)を入力して問い合わせれば、正確にカルテの表紙作成が出来ます。
最初は食わず嫌いで、「国も強引だな。」と思っていましたが、医療機関はこのシステムを使わないともったいないですし、もっと言えば、保険証のオンライン資格確認さえ出来れば、マイナンバーカードの必要性は低いです。
まあ、当院のように大部分の患者さんが気高町・鹿野町・青谷町の方で、かつ再診の方ですので、保険証のオンライン資格確認だけで十分ですが、都会や初診の多い医療機関ではマイナンバーカードの優位性があると思います。
話を元に戻して、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)を契機に、世界が大きく変わろうとしています。
地政学的リスク、物流停滞、物価上昇、資源価格上昇、金融危機、異常気象、農業問題、環境問題など、「鶏が先か卵が先か」議論はともかく、複数の要因が複雑に絡み合って、今の状況となっています。
世界 | 地政学的リスク、物流停滞、物価上昇、資源価格上昇、金融危機、異常気象、農業問題、環境問題 |
日本 | オンライン資格確認、鳥インフルエンザ、円安、物価上昇 |
鳥取県 | (上記と比べると影響が少ない) |
鳥取市 | (上記と比べると影響が少ない) |
気高町 | (上記と比べると影響が少ない) |
職場(クリニック) | パンデミック、電気代上昇、物価上昇(紙、トナー)、オンライン資格確認 |
個人 | パンデミック、電気代上昇、物価上昇(食料品) |
この表のように、職場や個人などの末端は、世界や日本の出来事をストレートに受けていることに気づかされます。
医療機関や医療従事者は、医療という特性上、国(厚生労働省)の影響を強く受けますが、個人レベルでは、世界の出来事に最も強く影響を受けています。
皆さんは、この大きな時代の変動の中で、どのように生きていきたいですか。
安定した公務員、大企業、有名企業で働いている人は、ひとまず安心でしょう。
僕はコロナ禍の3年4ヶ月間、保健所や県庁の人と、電話・FAX・メール・郵便で双方向のやりとりをしましたが、優秀な人が多いなと思いました。
文書の内容も分かりやすいですし、資料もまとまっていますし、送られてくるタイミングも適切ですし、分からないことを電話で尋ねてもすぐに回答してもらえました。
自分も負けじと、通知や資料が届けば、その日中に文書を読み、重要な所にマーカーで線を引き、翌日には職員に回覧するようにしました。
開業してからコロナ禍前までの10年間は、個別指導、集団指導、立入検査、各種届出など、どちらかと言えば、現場の第一線を知らない人が上から目線で仕事を押しつけてくる印象でしたが、コロナ禍以降は感染防護服の支給、ワクチン業務のサポート、院内感染時のアドバイスなど、「ありがたいなあ」と思うことが多かったです。
自分がまだ若い勤務医だった頃、上司だった千酌先生(現在、鳥大病院の副院長)に患者さんのことで相談すると、「現場の最前線にいる主治医としてはどうしたいと思う?」と聞かれることが多かったです。
抗癌剤や抗菌薬には多くの種類がありますし、投与量一つとっても年齢・体重・腎機能だけでなく、本人の気力・体力・食欲、前回の副作用の強弱などにより微調整したいものです。
その辺りをそれとなく尋ねられ、自分の意見を言い、方針を決めるわけですが、何となく自分が主体的にやっている気がしたものです。
今の県や市町村や保健所はそのような温かさを感じます。
まあ、コロナ禍が去れば、元の慇懃無礼な行政に戻ってしまうのかもしれませんが。
いずれにしましても、今の日本の行政は、外国と比べると質が高く(賄賂とかもなさそうですし)、行政は公務員に任せて、自分たちは自分たちの仕事を頑張れば良さそうです。
むしろ、優秀さが災いし、制度がどんどん複雑になっているのが気になります。
一般国民は、ついて行けるのでしょうか。
住宅購入・リフォーム、雇用促進、IT導入など、国民のための制度が沢山ありますが、自分にはさっぱり分かりません。
医療関係でも、補助金や診療報酬の加算がありますが、申請の複雑さ、手間、事後報告、施設基準など、とにかく自分には複雑で、途中から申請を諦めてしまいました。
経済学では、「社会が成長すると複雑化し、複雑化すると衰退する。」という言葉があるそうですが、自分の場合は、医療保険制度が成長・複雑化する前に、自分の脳みそが衰退してしまうのではないかと不安に感じています。
話をもう一度元に戻して、僕のように公務員でもなく、大病院勤務医でもなく、大企業や有名企業の従業員でもない人は、どうするのが良いでしょうか。
僕は、今まで通りで特に問題ないと思っています。
むしろ、これだけデジタル化・IT化が進んだ現在、田舎で開業医として生活していることに満足しています。
地理的に東京ほどのリスクはなさそうですし、物価(食品、アパート代、土地代)も都会ほど高くはありません。
「戦争に巻き込まれたら嫌だな。食料備蓄をしないといけないのかな。停電になったら嫌だな。」と思いますが、都会で贅沢な生活をしている人と比べると、失う物は少ないように思います。
世界情勢に注目しつつも、日々、静かな生活を心がけるのが大切と考えています。
職員には、長期間、苦労させたと思います。
寒い中・暑い中・雨の中・雪の中、屋外での病歴聴取・診療補助・会計は大変だったと思います。
患者さんへの結果説明の電話、保健所への毎日のFAX、昼休憩の食事は一人で食べる、昼休憩のスタッフルームは窓もドアも開けて常時換気する、廊下からスタッフルームの目隠しは「ついたて」で行う等、新しい業務、新しいルール、納得出来ない決まりも多々あったと思いますが、院長に不満を言う職員は一人もいませんでした。
今後、行政への報告もなくなりますし、院長が感染した時の休業要請や職員が感染した時の休業日数のルールもなくなりますので、徐々に院内感染対策を緩めていきます。
患者さんにもご迷惑をおかけいたしました。
最長で2時間ほどお待たせしたこともありました。
「喉が痛いので喉も診て欲しい」と言われたこともありましたが、喉の診察は飛沫感染のリスクが高く、お断りしておりました。
喉の診察は、患者さんはマスクを外す必要がありますので、もし、咳やくしゃみを浴びて感染した場合、仮に7日間休診となった場合、1日50人×7日間で350人の患者さんに迷惑をかけることになります。
それを考えると、とても喉の診察は出来ませんでした。
先日、米子で医学科4年生の感染症の講義をしたのですが、溶連菌、手足口病、突発性発疹などの口腔粘膜所見の話もしましたが、「本当に、喉の診察をしなくなったな。」と思いました。
今の大学4年生は、2020年4月入学ですから、パンデミックと共に大学生活が始まり、パンデミックと共に大学生活を送ってきた学年です。
自分の娘も大学4年生ですので、残りの大学生活を充実して過ごして欲しいなと思います。
もう大人ですから、コロナのせい、親のせい、学校のせい、社会のせいにしてもらっては困りますが。
来年が就職難になるのか、不景気になるのか分かりませんが、仮に不本意な結果となったとしても、自分の努力・能力が足りなかったと考えないと成長しませんしね。
新茶の季節です。
ご実家が鹿児島の職員から頂いた、今年初めての鹿児島県産の新茶を飲みながら、このブログを書いています。
父親の誕生日と、母の日が近いので、実家に持っていく新茶を注文中です。
たまには両親を誘って食事に行ったり、県外での学会に参加したりと、徐々に活動範囲を広げていく予定です。
当院ホームページのトップページにあります「発熱の患者さん 新型コロナウイルス感染症が心配な患者さん」は近日中に業者さんに頼んで削除します。
当面は、発熱・咳・はき気(おう吐)のある患者さんは今まで通り、屋外(車、待機室)での診察とさせて頂きます。
コロナ検査希望の患者さんも屋外(車、待機室)での診察とさせて頂きます。
また、院内のベッド数は4台ですので、ベッドの空きがなければ、屋外(車、待機室)での診察とさせて頂きます。
もう一つ、トップページにあります「オンラインや電話による診療」も適切なタイミングで削除します。
7月末までは、コロナ特例で電話診療が可能ですが、春以降は全くニーズがありません。
8月以降もオンライン診療や電話診療を行うためには、今より厳しい条件を満たす必要があります。
具体的には、「夜間や休日も原則自院で対応する。対応できない場合は、事前に対応方法を説明する。」などです。
そもそも、当院は医師一人の開業医で、以前から夜間や休日の診療は行っておりません。
休日・夜間も対応するとなると、患者さんの健康増進の前に自分が病んでしまいます。
うつ病になったり、脳卒中や心臓発作を起こしたりするでしょう。
患者さんも不健康な医者に診察してもらいたくはないでしょう。
「なんだ、24時間対応ではないのか。」と思う方もおられるかもしれませんが、何年も外来に通ってくださった患者さんが自宅で死にたい(家族が家で看取りたい)と言われれば、「呼吸が止まっても診療時間内は他の患者さんに迷惑を掛けますので、死亡確認の往診には行けませんよ。夜中も自分の睡眠を優先しないと翌日の外来診療に支障が出ますので、死亡確認の往診には行けませんよ。行けるのは、外来の始まる前の朝、昼休憩中、外来の終わった夜だけですよ。」と説明した上で、在宅医療を開始しますし、実際に在宅で看取っていますし、納得されて喜ばれています(いるはずです)。
医療費も24時間対応の医療機関と比べるとずいぶん安いです。
まあ、病院で濃厚医療を受けながら最期を迎えたい方も(家族も)おられますので、価値観の問題だと思いますが。
それでは、皆様、これからもよねだクリニック・院長・職員をよろしくお願いします。