2020.04.18(更新日:2020.04.18)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、世界中、日本中が大変なことになっています。
COVID-19は無症状の人、軽症の人も多く、それが感染拡大の要因の一つになっています。
その一方で、一定の割合(20%程度)で重症化し、日本のように医療崩壊に至っておらず、集中治療を受けたとしても死に至るケースもあり、余計に恐怖心をあおります。
院内の備品は、マスクはもちろん、アルコール手指消毒も、何週間も前から卸さんに注文していますが、届きません。
ゴーグルは卸さんには注文さえできませんでした。
アルコール綿は1月に10個までと言われています。
防護衣はネット通販で注文していますが、まだ届きません。
数年前に胃カメラをやめたときに、看護師が使用していた長袖防護衣を捨ててしまったのが悔やまれます。
毎週、ミーティングでは、コロナ対策の話ばかりです。
1月に、マスクが品薄になるのではと予想し、多めに買っていましたが、それが無くなったら、職員各自で布マスクを持参できるように、今から準備しておくようにと話しています。
そのような状況下で、毎日出勤してくれている職員に感謝です。
本日、午後から、日本感染症学会の特別シンポジウムがLIVE視聴で開催されました。
①コロナ対策:OVER VIEW
②クラスター解析から COVID-19の疫学と対応策
③臨床症例の共有
④医療体制の維持
⑤専門家の説明責任と市民の行動変容
⑥臨床試験の進行状況と新知見
上記内容で行われたのですが、症例が蓄積されてきており、全国レベルでのPCR結果も公表されてきており、現状を認識することが出来ましたし、課題も明確になったと思います。
課題は、以下に集約されると感じました。
①国民一人一人の行動変容を促し、感染の急拡大を防ぎ、医療崩壊を防ぐ。
②PCR検査などの検査態勢を充実させ、より正確なデータに基づき、対策していく。
③医療崩壊が起こる前に、有効な治療法を確立する。
④人との接触を減らせない医療従事者、エッセンシャルワーカーに対するスティグマ、偏見、差別がないように住民の皆さんに理解して頂く。
上記④は、医療従事者に限ったことではありません。
学校(特に中学校、高校)でのインフルエンザでよくある話ですが、「うちのクラスで一例目になりたくない」と思っている人は多いと思います。
その後、いじめ・非難攻撃に遭いたくないからです。
院内感染や施設内感染を起こした施設を責めるべきではありません。
ニュースで、特定の施設名を読み上げたり、建物や看板を映したりしていますが、見せしめと言いますか、いじめるようなことをして、意味があるのでしょうか。
集団感染を起こした施設は、社会に対する加害者なのでしょうか。
義務感からCOVID-19の患者さんを受け入れたり、運悪く無症状の患者さんを診察した結果、集団感染を起こしてしまったケースがほとんどだと思います。
そのあたりは、マスコミより行政の方が、人権を考慮して行動していると思います。
感染症の中でも、インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳、結核などは、比較的、誰から誰にうつった(誰からうつされた)というのが分かりやすい感染症です。
特にインフルエンザで、学校の先生から生徒・学生にうつった場合、クラスで最初に休んだ場合などは、悪気がなくても責められる傾向にあります。
しかし、感染症においては、誰でも加害者にも被害者にもなり得るので、悪意のある人、よほど無自覚な人を除いては、加害者・被害者という考え方は適切ではありません。
本日午前中、高齢者が息子さんに連れられて、結核の接触者検診に来られましたが、「感染症には被害者も加害者もないので、責めてはいけませんよ。」と話しました。
話は変わりますが、先日、発熱、咳、呼吸困難を訴えて受診された患者さん。
マスクをしていなかったので、「マスクを持ってきていませんか」と尋ねたところ、「ある。車の中にある。」と言われました。
「車に戻って、取って来て下さい。」とも言えず、マスクをお渡ししました。
レントゲン検査と血液検査を勧めたところ、「レントゲンだけでよい。」とも言われました。
そのような患者さんがスーパースプレッダーになりやすいわけですが、そういう患者さんに限って、カーテン隔離、個室隔離をお願いしても逆ギレされます。
先日、妻は、行きつけの美容院に行く前に、電話で承諾を得てから行ったそうです。
その一方で、
「大変ですね。」
「頑張ってください。」
「先生もお大事に。」
などと声をかけて頂くこともあります。
最近、思うことですが、行政は、数週間後、数か月後の医療体制をどのようにしたいと考えているのでしょうか。
厚生労働省は「新型インフルエンザ対策のガイドライン」を策定・公開していますが、新型コロナウイルス感染症にあてはめるのは難しい面もあります。
例えば、潜伏期間の長さ、無症状の人が別の病気で受診する可能性の高さ、軽症の人が風邪と思って受診する可能性の高さ、重症化の頻度、死亡率の高さ、院内で濃厚接触があった場合の休業期間の長さなどは、インフルエンザウイルスとコロナウイルスとでは異なります。
現状では、フェーズを明確にせず、「なし崩し的」「何もしないよりはまし」という具合に対応している印象です。
我々開業医も、「院内で濃厚接触があれば休業要請」「医師や看護師が感染したら休業」といった具合に、地域全体で見ると、モザイク的・まだら模様的に休業・再開を繰り返していきそうな気配です。
フェーズ毎に、そして無床診療所、有床診療所、中小病院、総合病院に分けて、「どのような役割を期待されているのか」「どの程度院内感染が蔓延したら休業を要請されるのか」を明確にして頂けると、「その時はその時」と覚悟できます。
いろいろ書き連ねてきましたが、なるべく最新の情報を入手し、COVID-19の患者さんが紛れ込んだとしても(全国的には散見されます)、院内感染対策を適切に行うことで、慢性疾患で定期的に通院されている患者さんの医療も継続して提供できるように努力していきたいと思います。
健康面でも、医療提供においても、経済的にも、国全体が大変な状況ですが、今、一人一人に出来ることは、仮に感染したとしても、重症化しにくい体力、免疫力をつけておくことです。
一番大切なのは、生活習慣病と同様に、毎日の食事です。
レトルト食品、インスタント食品を備蓄しておくことは重要ですが、それは生鮮食料品が入手できなくなった場合に、短期間しのぐためのものであり、「スーパーに行くのが面倒だから」「料理を作るのが面倒だから」と、備蓄している食品を食べてはいけません。
次に大切なのは、適度な運動です。
体力づくり、気分転換のために、ウォーキングなどの運動をしましょう(三つの密を避けて)。
その次に大切なのは、睡眠です。
病院勤務の人、交代勤務の人、経営者などは難しいですが、可能な限り、睡眠を確保して下さい。
そして、COVID-19に感染したかなと思ったら、特に持病のある人は、早めに「発熱・帰国者・接触者相談センター」に電話相談されることをお勧めします。
長い文章になってしまいましたが、最後までお読み頂き、ありがとうございました。